皆さん、こんにちは。ジェイさん@発信する遊技機ブランドプロデューサーです。

2026年4月、パチンコの『eリコリス・リコイル』がニューギンよりリリースされました。一方でパチスロ版『スマスロ リコリス・リコイル』は別メーカーからの登場が予定されています。
ユーザー目線では少し不思議に見えませんか? 同じ版権なら同じメーカーがまとめて出すほうが自然だと感じるでしょう。
『Re:ゼロから始める異世界生活』(大都技研)や『機動戦士ガンダムユニコーン』(SANKYO)のように、同じメーカーから出るケースがある一方で、こうした「同じ版権(IP)なのに、パチンコとパチスロでメーカーが違う」というケースは、実はそこまで珍しい話ではありません。
近年でも、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』はパチンコが京楽でパチスロがミズホ、『ソードアート・オンライン』もパチンコが京楽でパチスロが大都技研から登場しています。
今回は「なぜ同じIPなのにメーカーが分かれるのか」を、版権機開発の現場感も交えながら書いてみます。
結論から言えば、基本的に「パチンコ化」と「パチスロ化」の版権契約が分かれているからです。権利元は、パチンコにはパチンコで、パチスロにはパチスロで、それぞれ条件の最も良いメーカーと契約します。
メーカーごとに得意分野も違えば、作品ごとに投下できる予算感も違います。ファンから見れば同じIPでも、契約の入口では最初から別案件として動いていることが多いのです。
さらにここは外から見えにくい部分です。
複雑なケースとして、一見同じIPでも、実は権利元が同じではないケースがあります。たとえば、アニメ版・劇場版・漫画原作版・ゲーム版などで、交渉する権利元が異なることがあります。
つまり見た目は同じ作品でも、「どの素材をどこまで使えるか」は別物ということも珍しくありません。
では、同一メーカーでパチンコもパチスロも合わせて作る場合は、開発しやすいのかというと、実はそこまで単純でもありません。私自身、同じメーカーでパチンコもパチスロも扱ったケースも、別メーカーで分かれたケースも経験がありますが、作り方の感覚は意外と大きく変わりません。
理由ははっきりしています。同じ映像、同じセリフであっても、そのまま使い回せないのが基本だからです。
パチンコで監修を通過したものが、そのままパチスロでも使えるわけではないのです。パチンコ・パチスロでそれぞれ監修を通し、それぞれ必要な素材を用意する流れになります。
また、パチンコとパチスロで適した尺が異なります。台本上はまったく同じセリフであっても、パチンコ・パチスロそれぞれに合ったスピード(尺)で言い回しを変えていたりするのです。
もちろん、同一メーカーならではの利点もあります。機種オリジナルBGMやロゴ、キャラモデルなどを共用できれば、コスト面でも進行面でも助かることがあります。
実際、開発終盤の仕様変更で新たなステージやCZを急きょ追加しなければならなくなった際、パチンコ側で作っていた素材を流用して乗り切ったこともありました。現場目線でいうと、同一メーカーの強みが出るのは、「平時」よりこういった「緊急時」だと言えます。
同じメーカーなら、パチンコとパチスロを同時発売して注目を集めたらいいんじゃないか…? このように考えるユーザーの方々も多いことでしょう。
しかし、これも簡単ではありません。版権物の液晶機は、版権取得からリリースまで3年、あるいはそれ以上かかることも珍しくありません。開発期間は非常に長いです。
その間に市場の空気は変わります。パチンコとパチスロでは求められるトレンドも違えば、規則や内規への対応タイミング、適合の難しさもズレます。
権利取得時には同時展開を考えていても、最後まで並走できるとは限らないのです。むしろ、発売時期が揃わないほうが自然です。
ここは開発側の本音に近いところです。自分がパチスロ側を担当していて、同じIPのパチンコが他社から先に出るとします。これは当然、かなり意識します。
理由はシンプルで、ユーザーはこちらが思う以上に「同じ作品の中での温度差」に敏感だからです。パチンコで熱く扱われていたものが、パチスロ版ではそうではなかった。そういうズレは、打ち手に違和感として伝わります。
ですから、先に出た同IP機種は、参考程度では済みません。私は実際にホールで打つだけでなく、実機を購入して研究しています。それくらい見ないと「何を拾って何を変えるか」の判断ができないからです。

同じ版権なのにメーカーが違う。これは不自然なことではなく、今の業界では自然な流れです。
だからこそ、同じIPのパチンコとパチスロを見比べるときは、『なぜメーカーが違うのか』だけでなく、『それぞれが何を強みとして、その作品をどう表現したのか』という視点で見てみてください。開発スタイルの違い、表現の違いが見えてくると、版権機の面白さも変わって見えてくるはずです。